人権尊重
基本的な考え方
当社グループは、「経営理念」において、重視する価値観の一つに「人間尊重」を掲げるなど、人権を尊重した経営を推進しています。2004年に制定したコンプライアンスマニュアルで、「人権の尊重」や「不当な差別の禁止」を遵守すべき事項として明示し、人権を尊重する企業文化の醸成を行ってきました。また、事業のグローバル化に伴い、バリューチェーン全体での人権への配慮が重要であるとの認識を強め、「住友重機械グループ人権方針」を策定し、グループ一体となった人権尊重の取り組みを強化しています。
住友重機械グループ人権方針
当社グループの人権に関する方針として、2023年2月「住友重機械グループ人権方針」を、取締役会の決議を経て策定しました。本方針は、外部有識者、NGOの意見を踏まえるとともに、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」などの国際規範や、経済産業省のガイドライン※を参照しています。
※2022年9月策定「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」
- 1基本的な考え方
私たち住友重機械グループは、「住友の事業精神」並びに当社グループの「パーパス」及び「経営理念」に基づく企業倫理のもと、社会に対する強い使命感を持ち、事業活動を行っています。
また、私たちは、住友グループの発祥の地である別子銅山で使用する機械・器具の製作と修理を担う工作方を祖業の一つとし、独自の技術力によって、機械化による労働環境の改善に寄与してきました。
私たちは引き続き、「企業使命」実現のため、誠実にステークホルダーと向き合い、人権尊重の取り組みに最大限努めることを約束します。
なお、本方針におけるステークホルダーの中には、従業員をはじめとしてお客様、ビジネスパートナー、地域住民、株主・投資家などが含まれます。 - 2本方針の位置づけ及び適用範囲
本方針は、住友重機械グループの業務に従事するすべての役員、従業員及び派遣社員(以下「役員・従業員など」)に対して適用される、人権に関する最上位の方針です。
また、私たちは、本方針をお客様やビジネスパートナーの皆さまにも実践していただくことが重要であると考えています。本方針及び住友重機械グループの調達に関するガイドラインなどの理解と実践をビジネスパートナーにお願いし、ともに社会的責任を果たすよう働きかけていきます。 - 3国際規範・法令などの遵守
私たちは、世界のすべての人々が享受すべき基本的人権について規定した国際規範(「国際人権章典」、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」、国際労働機関の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」、「OECD 多国籍企業行動指針」など)を支持・尊重した事業活動を行います。また、事業活動を行う国または地域においては、当該国または地域の法令などの遵守徹底に取り組みます。
万が一、事業を行う当該国または地域の法規制と国際的な人権規範との間に矛盾が生じる場合には、より高い基準に従って問題を改善するための方法を追求します。 - 4人権尊重に対する責任
私たちは、自らの事業活動が、直接・間接的に人権への負の影響を及ぼす可能性があることを理解しています。ステークホルダーの人権を侵害しないよう、最大限配慮し適切に対処することで人権尊重の責任を果たします。
- 1私たちは、年齢、国籍、人種、民族、出身、宗教、信条、政治的指向、婚姻状態、家族構成、性別、性的指向、性自認、障がい、雇用形態などを理由としたいかなる差別も認めません。
- 2私たちは、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメントなど、個人の尊厳を傷つける一切のハラスメント行為を許容せず、心理的安全性が担保された風通しのよい組織風土を醸成します。
- 3私たちはお互いの多様性や価値観を認め合い、一人一人がいきいきと働ける職場づくりを推進するため、ダイバーシティ推進を重要な経営課題と位置づけています。また、結社の自由、労使協議、労働安全衛生などの分野にも積極的に取り組み、従業員などとの対話を通じて安全で働きやすい職場環境を提供します。
- 4私たちは、人身売買、暴力・脅迫・債務などによる強制労働、児童労働、現代奴隷を認めません。
- 5人権デュー・ディリジェンス
私たちは、人権に関わるリスクを把握・評価し、人権尊重の取り組みの効果を検証・改善するための一連の仕組み(人権デュー・ディリジェンス)を第三者機関と協力して整備し、これを継続的に実施します。
- 6対話
私たちは、ステークホルダーとの対話と協議を継続的に行うことにより、人権尊重の取り組みの改善に努めます。
- 7教育
私たちは、本方針が役員・従業員などに正しく理解され、事業活動で実践されるよう、適切な教育を実施します。また、ビジネスパートナーの皆さまにも本方針を実践していただけるよう、よい取り組みの共有などを積極的に働きかけていきます。
- 8救済へのアクセス
私たちは、自らの事業活動が、直接・間接的に人権に対して負の影響を与えたことを認識した場合、適切な手段を通じて速やかに救済措置を講じ、必要に応じ、ビジネスパートナーとともに是正に取り組みます。この過程では、通報者に対する報復などの不利益な取扱いを禁止し、通報者を保護します。
- 9情報開示
私たちは、これまでの項で述べた人権尊重の取り組みの進捗を当社ウェブサイトや報告書などを通じて定期的に情報公開します。
マネジメント体制
人権尊重の取り組みは、取締役会の監督のもと、社長から任命を受けた執行役員企画本部長が責任者となり、推進しています。これらの取り組み状況については、取締役会及びサステナビリティ委員会(2回/年開催)に定期的に報告し議論を行っています。
また、人権に関する取り組みは、当社グループのあらゆる事業活動やステークホルダーに関係するため、2021年12月に全社横断の人権リスクPJ(プロジェクト)を立ち上げ、関係部門の連携を強化しています。人権リスクPJで決定した取り組み方針や計画に基づき、事業部やグループ会社も一体となって人権尊重の取り組みを行っています。
人権デュー・ディリジェンス
国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権への影響を特定、予防、軽減するための一連の取り組みとして、人権デュー・ディリジェンスを実施しています。リスクの高い領域を中心に、優先順位をつけて対応を実施しています。
人権リスク特定プロセス
当社グループは、グローバルサプライチェーンを構築するとともに、世界各地に製造拠点を有しています。グローバルの視点での労働者の人権確保を非常に重要な課題と認識していることから、以下の対象範囲について人権リスクを整理し、特定しました。
対象範囲 | 人権リスク特定プロセス | |
---|---|---|
当社グループ | 「人権リスクの深刻度」「当社への影響度」の2軸で分析の結果、国内における外国人技能実習生と構内請負・派遣労働者の人権リスクが高いことを特定 | |
国内サプライチェーン | 「当社向け売上比率」が高く、「外国籍社員数」が多いサプライヤーを潜在的高リスクサプライヤーと特定 | |
海外サプライチェーン | 「労働集約度」が高く、「地域の給与水準(1人当たりのGDP)が低い地域のサプライヤーを潜在的高リスクサプライヤーと特定 |
人権デュー・ディリジェンス実施状況/2023年
実施項目 | 結果・課題 |
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労働環境調査 企業の持続可能なサプライチェーンの構築を支援するNGO「一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン」(以下ASSC)と共同で当社グループのサプライチェーン上の労働者の労働環境調査を実施。 残業時間が多く、休暇取得が少ない職場を中心に、社歴等を考慮し、複数名に対しインタビューを実施。 |
調査対象
結果・課題 人権侵害や安全・人への健康影響が既に発生している、あるいは顕在化が直ちに懸念される人権侵害は確認されなかった。 |
構内請負・派遣労働者の人権尊重 構内請負会社から人権尊重の「誓約書」の受領、派遣会社との人権尊重の「覚書」の締結の取り組みを、優先順位をつけて順次実施。 |
調査対象 主要製造拠点である名古屋製造所(2023年10月実施) 結果・課題 本取り組みを通じ、人権への負の影響を無くしていくことにより、働きやすい職場環境の整備を徹底。 |
監理団体とのエンゲージメント 技能実習生受け入れ機関である監理団体の対応状況などを確認するためのエンゲージメントをASSCと共同で実施 |
調査対象 監理団体(2023年10月実施) 結果・課題 継続的なエンゲージメントにより、技能実習生の債務労働を防止し、働きやすい職場環境の整備を徹底。 |
これまでに実施した人権デュー・ディリジェンスの概要
2021年 | 「人権リスクPJ」発足 人権デュー・ディリジェンスの準備開始 | |
2022年 |
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サプライチェーンの人権デュー・ディリジェンス
■国内の潜在的高リスクサプライヤーへの実地監査の実施
サステナビリティ重要課題のひとつである「持続可能なサプライチェーンの構築」の重点施策として、人権侵害を受けるリスクが高いとされる外国人労働者の人権尊重を掲げています。外国人労働者の雇用者数と当社への売上高比率によって重点フォロー対象とするサプライヤー24社を特定の上、「潜在的高リスクサプライヤー」と定義し、2026年までに全ての対象サプライヤーに実地監査を行い、必要に応じ是正処置を促すことを目標としています。2023年度は7社に対し実施した結果、いずれも人権や労働環境面において大きなリスクがないことを確認しました。
■海外重要サプライヤーへの実地監査の実施
当社グループの重要サプライヤーに対し、労働環境に関する実地監査を実施しました。本監査は、ASSCと共同で実施し、監査の結果、人権侵害や安全・人への健康影響が既に発生している事項、顕在化が直ちに懸念される事項は特定されないことを確認しました。
■調達説明会の実施
CSR調達ガイドラインの周知を目的として、4つの事業部門に対して説明会を実施しました。サプライチェーン全体で人権尊重や、気候変動などのサステナビリティ課題に一層配慮した事業活動を推進し、強靭で持続可能なサプライチェーンの構築を進めます。
人権に関する相談窓口
サプライチェーン上の関係者向けの相談窓口として、「サプライヤー専門のお問い合わせ窓口」を当社HPに開設しました。
適切なプロセスおよび情報管理下での相談者・通報者の保護を最優先として救済に取り組むことができるよう準備を進めています。
役員及び従業員教育
■役員研修会
2023年9月に、当社グループの役員及び事業責任者39名に対し、ASSC代表理事の和田征樹氏をお招きし、「SHIグループの人権尊重への取り組み評価と今度の課題」と題した勉強会を実施しました。当社グループの人権リスクや、サプライチェーンへの影響に配慮した事業活動の必要性について理解を深めました。
■従業員教育
人権デュー・ディリジェンスの取り組みの一環として、人権教育を実施しています。2023年2月の人権方針策定の際には、日本語、英語、中国語の3か国語による社長説明動画を全従業員に配信し、目的や重要性を解説、周知しました。また、階層別教育、E-Learning、社長メッセージの配信など、人権に関する教育、啓発を継続的に実施し、グローバルな人権課題の理解に基づく人権意識向上を図っています。
トピックス
■インドネシア労働環境調査
2024年5月、インドネシアの住友建機株式会社カラワン工場の従業員、およびサプライヤー2社を対象に労働環境調査を実施しました。書類による調査、作業環境の確認、インタビューを実施し、人権侵害や安全・人への健康影響が既に発生している、あるいは顕在化が直ちに懸念される人権課題は確認されませんでした。今後も優先順位をつけて、継続的に実施します。
■構内請負・派遣労働者の人権尊重の取り組み
人権リスク特定プロセスにて、国内における構内請負・派遣労働者の人権リスクが高いことから、構内請負会社から人権尊重の「誓約書」の受領、派遣会社との人権尊重の「覚書」の締結の取り組みを実施しています。まずは、当社製造所内にて事業を行っている事業部門や、技能実習生の労働環境調査を実施した事業部門の中から優先順位をつけて実施しています。2024年上期には、主要製造拠点の一つである千葉製造所において、実施しました。