超精密両頭研削装置「RITS-30」発売
2000年11月27日
住友重機械工業株式会社(社長 日納義郎)は直径300mmのシリコンウェーハ用の超精密両頭研削装置を開発し、本格的に営業を開始します。
半導体回路の微細化と高集積化により、次世代のシリコンウェーハには高い加工精度が求められています。これまでのウェーハの仕様は、回路を露光する片面だけを鏡面に仕上げるものでしたが、次世代の大口径ウェーハでは、表と裏の両面を鏡面に加工する仕様に変わってきています。
当社では、ウェーハの両面を同時に研削できる超精密両頭研削装置「RITS(リッツ)-30」を開発しました。ラップ盤での加工にくらべ、ウェーハの表と裏の両面を同時に研削することで高い平坦度が得られます。また、ウェーハを数枚単位で加工するバッチ処理に比べ、加工精度のばらつきを抑えることができます。研磨剤を使用しない固定砥粒(とりゅう)方式であるため、作業環境も改善します。検査についても加工ごとに計測するインプロセス化が可能で、大口径ウェーハの生産において歩留まりと品質の向上が期待できます。
「RITS-30」は直径300mmの大口径ウェーハを延性モード(注釈1)で研削加工することをコンセプトに開発されました。延性モードに必要とされる遷移点切込量(注釈2)100nm(ナノメートル)以下を確保するために装置全体に高い剛性をもたせるとともに、水圧シリンダと圧力制御型サーボバルブを用いたアクチュエータと高いダンピング(吸振)特性をもつ摩擦型案内面を採用しました。また、高性能光学スケールにより位置フィードバックを安定的に実現できる機構とし、最小20nmの超精密な主軸の送りを達成し、延性モード加工の可能性を備えた両頭研削装置を完成しました。本装置は、まずラッピングと次工程のエッチングの両工程を研削工程ひとつに置き換えることを目的としています。さらに加工ツールのダイヤモンドホイールを最適化することにより、研削後の加工ひずみ(ダメージ層)を低く抑えることができるため、ウェーハ平坦化の最終工程であるポリッシング作業負担の軽減も狙います。
当社では「RITS-30」を通して、ウェーハの加工工程の省力化に貢献していきます。
1.特徴
(1) シリコンウェーハの研削抵抗に対し加工負荷が一体フレームの中心に作用する構造としており、十分なループ剛性(主軸から主軸の装置全体剛性)を有している。
(2) 延性モード加工に必要な遷移点切込量(100nm)以下の微細かつ安定な主軸の送り駆動分解能を有している。
(3) 主軸回転軸受には水静圧軸受、主軸送りに水圧アクチュエータを採用することで各機構の熱変化を抑制し、高精度で安定的な加工を実現している。
2.価格
8,000万円~1億円
(ウェーハの搬送システムの仕様などの違いにより価格が異なります)
3.年間販売目標 20台
(注釈1) 延性モード:
工具の運動軌跡が工作対象物にそのまま転写されながら加工が行われるモード。切り屑が細長くカールするのが特徴。
延性モードに対して、ぜい性モードがあり、横割れやクラックなどぜい性破壊を生じながら加工がすすむ。 切り屑は破砕片となる。
(注釈2) 遷移点切込量:
工具の工作対象物への切り込み深さにより、延性モードとなるかぜい性モードとなるかが決まる。
両方の遷移点での切り込み深さのこと。
ガラスの場合は100nm。