アルゴンエアロゾルによる半導体ウエハー洗浄装置納入
2001年09月17日
住友重機械工業株式会社(社長 日納義郎)はアルゴンエアロゾルを用いた半導体ウエハーの洗浄装置「CleArJet(クリアージェット)」を半導体・電子機器メーカーとして国際的代表企業である韓国の三星電子株式会社(以下三星電子)に納入しました。
この製品は、ウエハー表面に付着する微細なパーティクル(注1)をアルゴンエアロゾル(注2)の噴射によって除去する装置です。当社は三星電子とアルゴンエアロゾルによる洗浄技術の半導体生産ラインへの適用について共同開発を実施し、先端的半導体プロセスの様々な工程で高い洗浄効果を確認しました。その成果により、三星電子より本装置を受注し、このほど同社器興(キフン・Kiheung)工場に納入したものです。
半導体回路の微細化、高密度化に伴って、その製造工程で用いられるウエハー洗浄装置にはこれまで以上に高い洗浄性能が求められています。特に、半導体の製造に使われる材料は、銅や白金などを含む特殊な金属や、有機絶縁材料など様々なものが導入され、これまでの水や薬液を使う洗浄方法では材料が影響を受けて素子の特性が損なわれるという問題が出てきています。
当社はこの様な問題を解決するために、材料に悪影響を及ぼさない不活性ガスの一つであるアルゴンを用いた洗浄装置を開発し、商品化を進めてきました。
この装置は、冷凍機でアルゴンガスをマイナス180度前後まで冷却し、真空の洗浄室に噴出させます。アルゴンガスはノズルから噴出する際に断熱膨張作用でさらに冷却され一部が個体微粒子となって、固体、気体、液体の混合したエアロゾルジェットを形成します。このジェットによってウエハー表面に付着しているパーティクルを除去します。エアロゾルはウエハーに当たると同時に気化し材料に影響を与えることなくパーティクルと共に排出されます。また、エアロゾルジェットをさらに加速する機能を開発することで洗浄力を高めました。その結果、付着力の強い0.05μm以下の超微細パーティクルの除去や、エッチングなどの際に生成される残さの除去、CMP後のスラリー粒子の除去など、種々の洗浄工程への適用を可能にしました。
当社は、半導体デバイスの高密度化により発生する洗浄プロセスの問題を解決する有効な手段として本装置の普及をはかり、今後の先端半導体デバイスの生産に貢献していく考えです。
【装置の特長】
・乾燥工程が不要な完全ドライ洗浄で、水や薬品をきらう新材料に対しても腐食・劣化を起こさずに洗浄が可能。
・エアロゾルジェットの加速機能により、CMPで使用しているアルミナ粒子、シリカ粒子の除去試験において、0.2μm以上のパーティクルでは99.9%以上という高い除去率を実現。
・純水、薬品、溶剤を使用しないため、廃液処理が不要。
【処理能力】
8インチウエハー 40枚/時以上(枚葉処理)
【主要構成】
2ロードロック室、トランスファーロボット室、2洗浄室、アルゴン冷却用熱交換システム、ドライ真空排気システム、マンマシン/運転制御システム
【冷却装置】
当社製 ギフォードマクマホン型ヘリウム冷凍機
(注1)パーティクル:ウエハー表面に付着する微細な粒子状の汚染物。
(注2)アルゴンエアロゾル:アルゴンの固体、液体、気体の混合した状態。