PET検査用の「FDG合成装置(F100)」が医療用具として承認
2002年03月06日
住友重機械工業株式会社(社長 日納 義郎)は、当社のPET(Positron Emission Tomography、陽電子断層撮影法)検査用「FDG合成装置(F100)」が厚生労働省より医療用具として承認されましたのでお知らせします。
「FDG合成装置(F100)」はPET検査用放射性医薬品合成装置※1の一種で、主にがん診断に使用される18F-FDG(フッ素-18で標識化された薬剤)を自動合成する装置です。FDG合成装置はこれまで、GE横河メディカルシステムが輸入、当社が販売している「FDG MicroLab(エフデージーマイクロラボ)」が医療用具の輸入承認を受けているのみであり、国産のFDG合成装置が製造承認を受けたのは当社が初めてです。今回、「FDG合成装置(F100)」が医療用具の製造承認を受けましたので、本装置の製造場所である当社新居浜製造所(愛媛県新居浜市)での製造許可(GMP)※2の申請を行う予定です。
PET用放射性医薬品合成装置には、検査する目的に応じて様々なタイプがあり、いずれもサイクロトロン※3で作られた短半減期の放射性同位元素(RI)を使って薬剤を合成するものです。当社は先端医療を扱う病院や研究機関に対し、これまで国内メーカーで最多の19台のFDG合成装置を納入しています。「FDG合成装置(F100)」は当社2世代目の機種として、高品質のFDGを高い合成率で得られるのが特長です。FDG合成の方法には、従来から使用されている酸加水分解方式と、合成時間が短いために普及しつつあるアルカリ加水分解法があります。「FDG合成装置(F100)」はいずれの方法にも対応が可能であり、アルカリ加水分解法の場合で準備も含めて1時間程度で自動合成が完了します。
FDGによるPET検査は、腫瘍の発見率が高く、全身の撮影が可能なためがんの転移を早期に発見できることから、有効な検診の一つとして今後普及することが期待されています。当社ではPET検査用のサイクロトロン(CYPRISシリーズ)、PET用放射性薬剤合成装置を中心に、PET検査用のシステム機器メーカーとして信頼性の高い機器を供給していきます。
なお、当社はPET検査用放射性医薬品合成装置では、平成3年12月に脳酸素消費量を検査するための15O-酸素ガスを合成する「短寿命RI標識化合物合成システム(CYPRIS-G)」が厚生労働省より承認されいるほか、平成13年4月にがん治療用に「陽子線治療システム」が承認されています。
* CYPRIS(サイプリス)は当社の登録商標です。
※1 放射性医薬品合成装置
RI合成装置とも言います。病院内の小型サイクロトロンでつくられた半減期(寿命)の短い放射性同位元素(RI)を、PET検査用の薬剤に化合する装置です。合成された薬剤は体内に投与され、代謝、血流や酸素供給など生体の機能情報をカメラに捉えて検査します。PET検査用の薬剤には18F-FDG、15O-酸素ガスを含め、検査用途に応じて(日本アイソトープ協会・サイクロトロン核医学利用委員会が成熟技術として認定し、合成法、品質管理、その使用法を指針として示している成熟薬剤として)9種類あり、それぞれ専用の合成装置を用います。
※2 GMP(Good Manufacturing Practice)
GMPとは医療用具を製造する際の製造管理および品質管理規則です。医療用具を製造販売するためには、厚生労働省からの製造承認と医療用具を製造する製造所のある各都道府県からの製造許可が必要です。
※3 サイクロトロン
サイクロトロンは粒子を電気の力によって加速する装置です。磁場方向に対し垂直な面で旋回運動する荷電粒子の旋回に、同期した高周波による電界の力により加速させます。PET用途のほか、半導体用に照射する低エネルギー・タイプから核物理学用に使用される高エネルギー・タイプまで様々な種類があります。