お知らせ
業界初ドライプロセス応用 次世代半導体パッケージ向けプリント配線板の開発について
2003年01月20日
住友ベークライト株式会社
住友重機械工業株式会社
住友金属鉱山株式会社
株式会社伸光製作所
住友重機械工業株式会社
住友金属鉱山株式会社
株式会社伸光製作所
住友ベークライト株式会社(東京都品川区 社長:守谷恒夫)、住友重機械工業株式会社(東京都品川区 社長:日納義郎)、住友金属鉱山株式会社(東京都港区 社長:福島孝一)、株式会社伸光製作所(長野県上伊那郡箕輪町 社長:山﨑宏平 ※住友金属鉱山92%出資)の4社は、このたび次世代高速高密度パッケージに対応するプリント配線板を共同開発いたしました。
近年、通信の内容が通話から、静止画、音楽さらには動画へと移り変わるにつれて、高速通信の要求が高まっております。また、取り扱う静止画、動画の解像度が高まるとともに処理データ量がさらに加速度的に増加することから、高速データ処理が必須となっており、これらのブロードバンド、ユビキタス化の流れに対応して、半導体の動作クロックの高速化・高集積化が進んでおります。
このような市場の要求に対応するため、上記4社は材料・装置・プロセスなど各分野において開発を進めてまいりましたが、このたびCSP、BGA、MCMなどの高速高密度パッケージ用の多層ビルドアップ基板(SUMITOMO's Multi layer enhanced by Additive and Plasma Process 商品名:Addplap "アドプラップ")を共同開発いたしました。本製品は、優れた高周波特性、高密度化を達成し、また加工技術において業界初のドライプロセスを採用することで、高い信頼性を確保しており、今後は一層の高密度化にも対応できるポテンシャルを有しております。
各分野の開発内容は、以下のとおりです。
材料:
従来、高周波特性に優れる反面、加工が困難と言われたBCB樹脂 (Benzocyclobutene)を住友ベークライト株式会社の保有する高い有機 材料技術により加工し、UVレーザーによる微小径マイクロビア加工性 に優れる絶縁層材料を開発いたしました。この絶縁材料は、比誘電率 2.7※(従来品は4.0以上)、誘電正接0.0024※(従来品は0.0200以上) と、優れた高周波特性を有しております。
(※数値は実測値であり、保証値ではありません)
装置:
住友重機械工業株式会社においては、微小径穴明け加工のために高 精度UVレーザー穴明け装置を開発いたしました。また、フラットパネル ディスプレイ製造装置技術に基づき、材料特性を損なうことなくBCB樹 脂に直接良好な薄膜形成が可能な、プラズマ処理装置およびプラズマ 成膜装置を開発いたしました。
加工:
住友金属鉱山株式会社および株式会社伸光製作所のプロセス技術 により、トップ径φ50μmのマイクロビア、L/S=30/30μmのライン幅 /間隔の加工技術を開発いたしました。今後はさらに径φ30μm、の マイクロビア、L/S=15/15μmの実現に向け開発を進めます。この加工 技術は、ドライドプロセスを多用することにより、良好な密着強度、絶縁信 頼性を達成しております。
今後、本開発品につきましては、株式会社伸光製作所において量産体制を確立、販売する予定です。また、本年1月22日から東京ビックサイトにおいて開催される「第4回プリント配線板EXPO」の同社ブースに出展を予定しております。
同社は、AV機器、情報通信機器、OA機器、自動車部品などの分野において、多層プリント配線板総合メーカーとして開発、製造、販売を行っており、情報通信機器の小型化、高性能化への対応として2001年よりASTOB(極薄両面基板)、F3s(フリップチップ対応高密度多層ビルドアップ基板)を開発、量産化し、CSPやMCM市場へ参入するなど、日々進化を遂げるパッケージング高機能化のニーズに対応しております。
(本件に関する問合せ先)
株式会社伸光製作所 取締役 開発部長 瀧井 秀吉
TEL:0265-79-1811
FAX:0265-79-1362
E-mail:Shuukichi_Takii@el.smm.co.jp
以 上
【ご参考】 用語解説
1. パッケージ
ここでは、半導体を外部環境から保護し、取り扱い易くする為のケースを呼ぶ
2. CSP(Chip Size Package)
チップサイズパッケージ
3. MCM(Multi Chip Module)
マルチチップモジュール
4. I/O
入出力。ここでは半導体の入出力信号数を指す。
5. UVレーザー
固体レーザーの一種。ビルドアップ基板において従来使用されているCO2レーザー加工機より微小径の穴が加工できる。
6. マイクロビア
高密度配線板の層間を接続する為の小さな穴(一般に150μm以下)。
非貫通穴の場合が多い。マイクロバイアとも言う。
7. 比誘電率
誘電体に電界をかけた時、誘電体内部に電束が発生する程度を表す値。
信号の伝搬速度は比誘電率により定まる。
8. 誘電正接
誘電体に正弦波を印加した時、キャパシタンスに流れる電流は電圧に対して90°進んだものとなるが、抵抗成分が入るとδ°の遅れを生じる。
これをtanδで表した値を誘電正接と呼ぶ。プリント基板の場合この値が大きいと配線を流れる信号が熱となって失われ、減衰する。
9. ドライプロセス
プリント配線板の表面処理に薬液を用いる方式=湿式(ウェット)プロセスに対して、気体(プラズマ状ガス)を用いて処理するプロセスをドライプロセスと呼ぶ。本開発品では、マイクロビア穴底の樹脂残滓除去・絶縁体樹脂表面の密着向上処理・シード層(パターン部に選択的に電気めっきを行う際に、製品全体に電流が流れるようにするために施す薄い金属皮膜)形成にドライプロセスを用いている。
※ドライプロセスの利点
・ 絶縁体表面に大きな凹凸を設けなくても、導体と絶縁体の良好な密着強度が得られる。
・ 触媒を用いる必要が無く、パラジウムの様な異種金属が表面に残らないため、絶縁性能が良い。
・ 液体と異なり、界面に沿った染み込みが無く、絶縁性能が優れている。