お知らせ

ペンシルビームスキャニング照射法を適用した陽子線がん治療設備の医療機器製造販売承認を取得

2012年01月11日

住友重機械工業株式会社(社長 中村 吉伸)は、最先端の照射技術であるペンシルビームスキャニング照射法(以下、スキャニング照射法)を適用した陽子線がん治療設備(製品名:陽子線治療*1システム)について、厚生労働省より医療機器製造販売承認を取得しました。

スキャニング照射法を適用した陽子線がん治療設備は、当社納入先である、独立行政法人国立がん研究センター東病院殿と共同開発したものです。今後、臨床使用に向けて準備(コミッショニング*2など)を行った後、2012年度前半に、国内初の陽子線スキャニング照射法による治療が行われる予定です。

陽子線治療はこれまで、拡大ビーム照射法*3を使用し臨床成果を上げてきました。スキャニング照射法は、直径約10mmの細いビームを標的腫瘍の形状に合わせて精密に塗り潰すように照射します。拡大ビーム照射法と比較して、より複雑な形状の腫瘍の治療を実現し、周囲の正常な細胞への照射線量を抑えることが期待されています。また、拡大ビーム照射法で必要な患者専用ビーム成形器具が不要となるため、ランニングコスト低減や放射性廃棄物の低減に寄与します。

当社の陽子線がん治療設備は、陽子線発生装置に、高強度・連続ビームを発生することができるサイクロトロン*4を使用しているため、スキャニング照射法に対して優れた適応性を持っています。また、拡大ビーム照射法での治療も可能であるため、治療対象に応じて最適な照射方法を選択することが可能です。さらに、今回の医療機器製造販売承認においては、照射線量率を最大15Gy/minまで上げていますので、精密で高線量率の照射により、治療時間および治療期間の短縮も期待されています。

当社はこれまで30年以上にわたり、サイクロトロン等、加速器の医療分野での利用に関する研究・開発を続けてきており、1997年には国内初、世界でも2番目となる病院設置型の陽子線がん治療設備を国立がんセンター東病院(現国立がん研究センター東病院)殿に納入しました。今後、社会医療法人財団慈泉会相澤病院殿、台湾・長庚紀念病院殿、韓国・サムスンメディカルセンター殿等に順次、設備を納入する予定です。当社は、最先端技術を有する陽子線がん治療設備により、納入先病院と協力して陽子線によるがん治療の全世界への普及に貢献してまいります。

回転ガントリ照射装置

*1 陽子線治療:水素の原子核である陽子を高エネルギーに加速させ、がん細胞のみに集中的に照射する放射線治療法の一種で、がん細胞周囲の正常組織に対する影響を抑えることができ、副作用の少ない治療が可能です。一般的な外科手術と異なり、体に優しく、通院治療が可能ながん治療法として、世界中で脚光を浴びています。

*2 コミッショニング:治療品質を保証するための作業で、様々な治療条件、使用条件を想定した模擬治療作業を通して、治療計画による線量シミュレーション結果と実際の照射結果の整合性を確認、調整します。

*3 拡大ビーム照射法:陽子線発生装置から発生されたビーム径を大きく広げた上で、コリメータやボーラスと呼ばれる患者専用ビーム成形器具を使用して、標的腫瘍の形状にビームを成形して照射する方法です。

*4 サイクロトロン:円形加速器の一種。水素の原子核である陽子を光速の60%程度まで加速し、透過力の大きい陽子線を発生させます。他の加速器よりも高強度かつ連続的なビーム特性を持つため、肺や肝臓等の呼吸で動く臓器への照射の適応性に優れ、治療時間の短縮や治療回数の低減を実現させる能力を有します。