世界初 病院設置型加速器によるホウ素中性子捕捉療法システム(BNCT)を受注
2013年03月04日
住友重機械工業株式会社(社長 中村 吉伸)は、福島県の一般財団法人脳神経疾患研究所(理事長 渡邉一夫)から、加速器から中性子を取り出して患部に照射するホウ素中性子捕捉療法システム(以下BNCT)を受注しました。本システムは、医療の現場で専用機として使用できる、世界で初めての画期的な装置となります。
BNCT(※)と呼ばれるがん治療法は、がん細胞に取り込ませたホウ素(Boron-10)に微弱な中性子をあてることにより、ホウ素を取り込んだがん細胞を選択的に、核反応により破壊する治療法です。まわりの正常細胞は傷つけず、がん細胞だけ死滅させることが可能なため、他の放射線治療とは異なるユニークな放射線治療法です。
※BNCT =Boron Neutron Capture Therapyの略:ホウ素中性子捕捉療法
従来のBNCTは中性子を取り出すのに実験用原子炉を使って行われていましたが、今回のBNCTは原子炉ではなく、加速器(サイクロトロン)にて中性子を生成するため、病院内に設置することができるようになりました。このため、今後BNCT普及の第一歩となることが大いに期待されています。
本BNCTは一般財団法人脳神経疾患研究所附属の総合南東北病院(福島県郡山市)の敷地内に設置され、平成27年度から医療機器の薬事承認取得をめざし治験を開始する予定です。総合南東北病院は、地域がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院などの指定を受け、がん診断のPET、脳腫瘍ガンマナイフから民間病院では初めて導入された陽子線治療装置など最先端治療装置をそろえた日本で有数の総合病院です。今回、あらたに設置されるBNCTを加えると、世界でも類をみない総合最先端治療施設となります。
住友重機械はこれまで30年以上にわたり、PET、陽子線治療装置など加速器を中心にした最先端のがん医療技術の研究・開発を続けてきました。BNCTについても、京都大学原子炉実験所、ステラファーマ株式会社と共同で技術開発を進めてきました。今回、あらたにBNCTの医療機器化を図ることで、がんの診断から治療まで総合的な最先端技術の普及に、世界に先駆けて貢献してまいります。
1.BNCT 機器とレイアウトについて
BNCTシステムレイアウトと構成機器は以下の通りです。
①加速器(30MeVサイクロトロン)
②ビーム輸送装置
③中性子照射治療部
2.加速器によるホウ素中性子捕捉療法システム(BNCT)について
【加速器】
がん治療専用のサイクロトロン(※1)により、陽子はエネルギー30MeV (※2)まで加速されます。
【ビーム輸送装置】
サイクロトロンで生成し、加速された陽子線を中性子照射治療部照射装置まで運びます。
【中性子照射治療部】
輸送された陽子ビームをターゲットに衝突させ、中性子を発生させます。得られた中性子はまだエネルギーが強すぎるため、治療に最適なエネルギーとなるまで減速させ標的がん細胞に照射します。
(※1) サイクロトロン
円形加速器の一種。水素の原子核である陽子を光速の70%程度まで加速できる装置。
(※2) MeV(Mega Electron Volts)
eV(Electron Volt, 電子ボルト)はエネルギーの単位の一つ。100万eVが1MeVに相当。
下記①③写真は京都大学原子炉実験所設置型