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排水処理に新技術、75%の省エネ効果

2013年10月07日

住友重機械工業株式会社(社長 別川 俊介)は、独立行政法人国立環境研究所(理事長 住 明正)との共同研究で、常温で有機性排水のメタン発酵処理ができる技術の開発に成功しました。本技術が実用化できれば、世界初の事例となります。

国内産業で排出される排水は、年間で約111億トンの量があり、そのほとんどが比較的低濃度の有機物を含む有機性排水です。現在、これらの大部分は好気性微生物処理という方法(=活性汚泥法)で処理されています。この方法は消費電力が大きい上に多量の余剰汚泥が発生することが課題となっています。メタン発酵処理では、これらの発生量を大幅に削減できますが、排水中に含まれる有機物が中・高濃度であり、同時にぬるま湯程度の中温でしか適用できず、普及が進んでいませんでした。

今回開発した技術では、排水中の有機物含有量が低濃度、かつ常温での条件でメタン発酵処理ができます。これにより、適用範囲が大幅に増えるとともに、従来の活性汚泥法に比べて約75%の運転エネルギー削減が可能となります。今後は実用化を目指し、実証性能評価に移行していく予定です。早ければ1~2年以内の実現が見込まれ、世界初の事例となる可能性があります。


■特長
1)排水中の有機物が低濃度、かつ常温でも適用可能
従来のメタン発酵処理では、2~20 gCODCr/Lの有機物を含み、35~37℃ の温度でないと適用ができませんでした。今回の技術では0.3~1 gCODCr/L 程度の低濃度で、かつ常温(10~25℃)でも適用ができます。大部分の排水が、この条件に該当しています。


2)省エネルギー
現在主流となっている活性汚泥法では、曝気(微生物を活性化させるため、水中に酸素を供給する)運転や余剰汚泥処理のため、多くのエネルギーが必要でした。メタン発酵処理では曝気が不要となり、余剰汚泥の発生量も少ないため、実験では約75%の運転エネルギー削減を達成しています。また、余剰汚泥処分費も大幅に削減可能です。


3)従来の排水処理法との比較

COD:Chemical Oxygen Demandの略で、化学的酸素要求量ともいう。水中の有機物を酸化剤で酸化するときに消費される酸素量を表す。水環境の汚染を示す数値で、排水基準や環境基準としても使われる。そのうちCODCrは、酸化剤として重 クロム酸カリウム(K2Cr2O7)を使う方法、ほかに過マンガン酸カリウム(KMnO)を用いる方法がある。