お知らせ

「前立腺がん診断薬68Ga-PSMA合成装置の医療機器化を目指した共同研究契約の締結について」

2019年02月15日

国立大学法人 北海道大学 (医学研究院放射線科学分野 核医学教室准教授:志賀哲、アイソトープ総合センター教授 久下裕司 以下、北大)は、住友重機械工業株式会社(東京都品川区 社長:別川俊介 以下、住友重機械)、株式会社アトックス(本社:東京都港区、代表取締役社長:矢口敏和 以下、ATOX)と、前立腺がんの診断に用いられる放射性薬剤 68Ga-PSMA※1を製造する合成装置の薬事承認に向けた共同開発を開始しましたので、お知らせ致します。



前立腺がんは、本邦でも罹患率の非常に高いがんの1つとして知られています。前立腺がんのスクリーニング手法として血中腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)の検査が実施されていますが、病巣の広がり、転移の有無について判断することが困難です。原発巣の広がりや遠隔転移の有無の判断にはCT、MRI、骨シンチなどが用いられていますが、いずれも十分な精度・確度が得られておらず、より精度の高い診断法が望まれていました。また、確定診断として標準的に行われている針生検については、検査後の発熱や炎症などの合併症が起こるリスクを有しています。



近年、これらの前立腺がん検出法を凌駕する画像診断技術として、68Ga-PSMA PETに関する研究開発が欧米を中心に進められています。既に多数の臨床研究が実施され、原発巣の広がりを的確に把握することによる検査時の負荷軽減、適切なステージング(がん進行度)による正確な治療介入に役立つという報告がみられ、患者様の予後改善、QOLの向上に繋がると期待されています。



今後、本学では日本への68Ga-PSMA PET診断の導入を目指し、前臨床研究、医師主導型治験を通じて、68Ge/68Gaジェネレーターを使った68Ga-PSMA合成装置の医療機器承認を目指し、前立腺がんの適切な診断・治療に貢献して参ります。



※1:68Ga-PSMAについて

68Ga-PSMAは前立腺特異的膜抗原(Prostate Specific Membrane Antigen)に結合する放射性標識化合物です。前立腺がん組織には、PSMAが多数発現していることが知られており、68Ga-PSMAを投与することにより、前立腺がん組織の非侵襲的な検出、転移の有無が確認できると期待されています。



※2:PET診断

ポジトロン(陽電子)を放出する検査薬を注射し、その薬が体の中を移動して、疾患や各臓器等の色々なところに集まる様子を、体の外から「PETカメラ」を使用し、画像化して検査する方法。この検査薬を検査の目的に合わせて選ぶことにより、脳や心臓、がんなどの診断ができます。





株式会社アトックスについて

ATOXは1950年代から原子力施設内に事業所を開設し原子力施設の総合的なメンテナンス技術を築き上げ、最近ではRIを利用した医療分野の事業展開も手がけています。本共同研究に先駆けて原子炉や加速器などの大型設備を用いることなく68Gaを製造することができる小型装置であるIRE ELiT社の68Ge/68Gaジェネレーターの取扱いを開始し、より簡単なPET診断の実現を目指しています。

詳細はホームページをご覧ください。