加速器を用いたBNCTシステムの早期実用化に向けた先駆け総合評価相談を開始しました
2019年05月10日
住友重機械工業株式会社(社長 下村 真司)は、加速器(サイクロトロン)を用いたBNCT※1)(ホウ素中性子捕捉療法)システムに関して、ステラファーマ株式会社(社長 浅野 智之)と共同で頭頸部がんを対象とする第Ⅱ相臨床試験を実施して参りました。当該試験はBNCTの安全性と有効性を検証するもので、このほど被験者※2)21名に関して、施行後90日における奏効率(腫瘍縮小効果)の評価が終了し、期待値を達成したことが確認されました。この結果を受け、世界初のBNCTシステムの医療機器製造販売承認に向けて、先駆け審査指定制度※3)による総合評価相談を開始することになりました。この相談では医療機器の製造販売承認の申請文書・検証資料等の事前評価が行われます。また、先駆け審査指定制度に指定された品目の承認申請は優先審査として取り扱われるため、審査期間が短縮される見込みです。なお、当初の申請では上記の臨床評価に基づき頭頸部がんへの適応を目指すものですが、並行して将来の適応拡大を目的とした臨床試験が進行中です。
なお、本試験結果の詳細は、本年5月に米国イリノイ州のシカゴで開催されます2019 ASCO ANNUAL MEETING※4)にて発表される予定です。
※1 BNCTは、ガンの放射線治療の一種であり、その治療法は、ガン患者にBNCT用ホウ素薬剤を投与することで、ガン細胞内にホウ素(Boron-10)を選択的に取り込ませ、体外からエネルギーの低い中性子を照射するというものです。このとき、体内ではホウ素(Boron-10)原子核が中性子を捕獲して核分裂反応(10B(n,α)7Li)を起こし、この核反応により細胞にダメージを与えるエネルギーをもつα粒子(ヘリウム原子核)とLi 反跳核(リチウム原子核)が放出されます。これらの荷電粒子は、体内ではそれぞれ約9μmおよび約5μmの飛程しか持たず、この飛程はおよそ細胞1個分の大きさに相当します。これらの特徴により、理論的には、周囲の正常な細胞等をほとんど傷つけることなく、ホウ素(Boron-10)を取り込んだガン細胞を細胞レベルで選択的に破壊することが可能となります。
※2 頭頸部がんのうち、切除不能な局所再発頭頸部癌と切除不能な局所進行頭頸部非扁平上皮癌を被験者としています。
※3 先駆け審査指定制度は、「世界に先駆けて、有効な治療法がなく命に係わる疾患等(希少がん、難病等重篤な疾患)に対し、革新的医薬品・医療機器・再生医療等製品等を日本発で早期に実用化すべく、基礎研究から臨床研究・治験・審査・安全対策、保険適用、国際展開までを一環として国が支援する戦略パッケージ」として、平成27年から実施されています。本課題は、「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)システム」の名称で、平成29年2月29日付で先駆け審査対象品目に指定されました。
※4 ASCO(アスコ)は、米国臨床腫瘍学会(ASCO : American Society of Clinical Oncology)を指し、世界最大のがん学会となります。