加速器を用いたBNCT治療システムおよびBNCT線量計算プログラムの保険収載のお知らせ
2020年06月01日
住友重機械工業株式会社(社長:下村真司、以下 当社)は、加速器を用いたBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)治療システムに関して、ステラファーマ株式会社(本社:大阪府大阪市、社長:浅野智之)と共同で頭頸部がんを対象とする臨床試験を実施しました。この結果を受けて、2019年10月11日に医療機器製造販売承認申請したBNCT治療システムNeuCure™、ならびにBNCT線量計算プログラムNeuCure™ドーズエンジンについて、2020年3月11日付けで、厚生労働省より新医療機器としての承認を取得し、6月1日付で保険収載されましたのでお知らせいたします。また、ステラファーマ株式会社のBNCT薬剤ステボロニン®が薬価収載され発売開始されました。これにより、当社の製品が世界で初めてBNCTを保険診療で利用することが可能になりました。BNCTが切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がんの新たな治療選択肢の一つとして、貢献できることを期待しています。
■保険適用の概要
一般名称 | ホウ素中性子捕捉療法用中性子照射装置 ホウ素中性子捕捉療法用治療計画プログラム |
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販売名 | 【BNCT治療システムNeuCure™(ニューキュア)】 医療機器製造販売承認番号 :30200BZX00084000 令和2年3月11日付 【BNCT線量計算プログラムNeuCure™ドーズエンジン】 医療機器製造販売承認番号 :30200BZX00083000 令和2年3月11日付 |
区分 | C2(新技術) |
併用医薬品 | 一般名:ボロファラン(10B) 販売名:ステボロニン点滴静注バッグ9000mg/300ml |
保険点数 | 238,500点(総額として全ての項目に適合した場合) |
診療報酬点数区分 | M001-4(1のイ、注2、注3)、M001(3の注3)をそれぞれ準用 |
適応疾患 | 切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部癌 |
保険適用日 | 2020年6月1日 |
■各製品の特長
【BNCT治療システムNeuCure™(ニューキュア)】
本システムは、当社が約50年間にわたり蓄積してきた物理研究用および医療用サイクロトロンとそのビーム制御技術にもとづいて開発した高電流タイプ30MeV AVFサイクロトロンとそのビーム制御システムをベースに、2007年から開始した京都大学複合原子力科学研究所(大阪府泉南郡熊取町)との共同研究により開発した医療用中性子照射装置です。サイクロトロンから取り出される陽子ビームを中性子に変換するターゲットにはベリリウムを用い、医療機関などに求められる安全性、安定性に優れているのが特徴で、病院内への設置が可能になりました。
【BNCT線量計算プログラムNeuCure™ドーズエンジン】
BNCTの線量計算は、中性子の挙動を体内構成元素と合わせて詳細にシミュレーションする必要があることから、モンテカルロ法による計算プログラムが必須になります。本プログラムではモンテカルロコードに、PHITSと呼ばれる計算コードを使用しています。PHITSは国立研究開発法人日本原子力研究開発機構において開発された、グローバルに使用実績のある汎用モンテカルロコードです。当社はこのPHITSに対して、BNCTの線量計算を可能にする機能に加え、セキュリティチェックを含む外部I/Fなどの機能を追加しBNCT線量計算専用のドーズエンジンとして開発しました。腫瘍輪郭の設定や線量計算後の各種計画評価、レポート出力などのユーザインタフェースにはレイサーチ・ジャパン株式会社が製造販売する汎用放射線治療プログラムのRayStationを用いており、これとの併用で治療計画システムを構成します。
参考1:BNCTは、がんの放射線治療の一種であり、その治療法は、がん患者にがん細胞に選択的に取り込まれるホウ素(Boron-10)を含有するBNCT用ホウ素薬剤を投与し、がん細胞内にホウ素(Boron-10)を選択的に取り込ませた後、体外からエネルギーの低い中性子を照射するというものです。このとき、体内ではホウ素(Boron-10)原子核が中性子を捕獲して核分裂反応を起こし、この核反応により細胞にダメージを与えるエネルギーをもつα粒子(ヘリウム原子核)とLi 反跳核(リチウム原子核)が放出されます。これらの荷電粒子は、体内ではそれぞれ約9μmおよび約4μmの飛程しか持たず、この飛程はおよそ細胞1個分の大きさに相当します。これらの特徴により、理論的には、周囲の正常な細胞等をほとんど傷つけることなく、ホウ素(Boron-10)を取り込んだがん細胞を細胞レベルで選択的に破壊することが可能となります。
参考2:当社は、加速器利用によるBNCT治療システムについて、2007年より京都大学複合原子力科学研究所と共同開発を進め2009年に同システムを同研究所に設置しました。2015年以降、国内に2システムを納入しております。一方、京都大学などと非臨床試験および第Ⅰ相臨床試験を経て2016年から第Ⅱ相臨床試験を開始しました。2017年に先駆け審査指定制度による指定を受けました。
参考3:PHITS“Particle and Heavy Ion Transport code System”は、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)において開発されたモンテカルロコードで、世界中に4,000名以上のユーザを持ち、さまざまな放射線挙動をシミュレートした実績のある汎用モンテカルロコードです。
参考4:RayStationは、スウェーデンに本拠地を置くRaySearch社が製造販売する治療計画ソフトウェアです。RaySearch社は、2000年にカロリンスカ研究所(ストックホルム/スウェーデン)からのスピンオフで設立された会社で、先進ソフトウェアの技術開発をベースに、がん放射線治療分野にRayStationを含むさまざまなソフトウェア製品を供給しています。RayStationのソフトウェア製品は、65カ国以上の2,600以上の施設で使用されています。
■注意事項
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