嫌気処理排水からの電力回収に成功しました(チャレンジ制度)
2021年05月25日
住友重機械工業株式会社(社長:下村 真司)は、今まで廃棄されていた嫌気処理後(※1)の排水から微生物反応を介さずに直接発電することに世界で初めて成功しました。本成果は、2018年度より開始している「チャレンジ制度」(※2)に基づき、技術研究所で「微生物分解後の排水からのエネルギー回収」に取り組んだものです。
嫌気性排水処理設備は、1)ばっ気動力が不要、2)有機物の分解によりエネルギー回収可能なバイオガスが発生、3)余剰汚泥が少ないなどの省エネ型処理方式としてよく知られています。本設備では、有機物の嫌気的な分解によりガス化した成分を有用なバイオガスとして回収してきましたが、液中に溶け込んだ一部の分解産物は臭気や水質悪化の原因となるので除去が必要であり、従来はばっ気などの追加処理によりエネルギーを消費して除去してきました。
今回、この液中の成分が容易に酸化分解される性質に着目し、電極上で反応させることで、電力としてエネルギーを回収(※3)することに成功しました。(図1、図2)将来的な排水処理設備のIoT化に必要とされる電源の確保に対して、本成果は排水処理施設における環境発電技術として活用が期待されます。今後は2025年実用化を目指し、装置コストの削減や現場での実証試験を実施していく予定です。
当社は、社員のチャレンジ精神の育成に注力するとともに、新しい技術を創出し持続可能な社会の発展に貢献していきます。
※1嫌気処理:排水中の有機物を酸素がない環境で微生物分解させることで、メタンをはじめとする様々な成分が生成され、そのうちガス化する成分がバイオガスとして回収されています。一方で、液中に溶け込んだ成分は不要な物質として、ばっ気などの追加処理により除去されており、エネルギー回収はできていませんでした。
※2チャレンジ制度:本制度は、「社員のチャレンジ精神の育成」および「未来商品・技術への投資」のために、当社グループの将来を担う技術、アイデア、商品の構想を持つ社員に対し「夢を実現する場」を提供することを目的としています。会社が課題を与えるのではなく、社員自らが実現したいテーマを応募することが特徴です。
※3エネルギーの回収量:例えば対象物濃度が20mモルの場合に試験した結果では、1㎥の排水でおよそ0.3kWhの発電量が得られました。